《クールな彼は欲しがり屋》
ちょうど1年位前、世の中はクリスマスシーズン真っ只中で街を歩くとイルミネーションがやたら光っていたり、クリスマスソングが流れていた。
あの夜、私はずっと好きだった幼なじみに告白して振られた。黙っていれば、この先もきっと楽しい友達として、つるんだり出来たはずだ。
それなのに、私は告白してしまい、告白してすぐに振られた。好きな人がいるからって理由で断られたのには、正直すごく驚いた。
何に驚いたかって、彼に好きな人がいたことを全く気がつかなかった私に驚いたのだ。
全く私は彼のどこを見ていたのだろう。好きな人がいたことに全然気がつかないなんてどうかしている。
そんなんで、彼を好きだなんてよく言えるものだ。
自分自身にあきれながらワインやカクテルを沢山飲んだ。
あの夜、ほとんど愚痴ばかりの私の失恋話を親友の葵は黙って聞いていてくれた。
さんざん愚痴を言って泣いた私が、無言の葵に「ねぇ、なんで黙ってんのよお、呆れたの?」と聞いた。
「いや、そんなこともある。今は辛いだろうが、いつかは忘れる。人間なんて、そんなもんだ」
隣に座る葵の声がやけに低い。まるで男みたいだ。驚いて隣に座る人物に視線を向けた。