《クールな彼は欲しがり屋》
コンビニを出て、近くの八百屋へ寄って白菜や長ネギ、白滝に焼き豆腐、しいたけなどを買って店を出た。
出てすぐに、私の方を見ている人に気がついた。
「あっ..」
とても懐かしい瞳が私を見ていた。
すぐに切ない思いにとらわれ、瞬時に胸が締め付けられる。
「ひさしぶりだね....正史」
顔がこわばっているのが自分でもわかる。でも、微笑むしかなかった。
ふられたけど、好きだった人だ。
忘れられない思い出もたくさんある。
紺のマフラーに埋もれていた正史の口元が見えた。
「元気だったか?ケイ」
ケイ。
正史や学生の時の友達は私をそう呼ぶ。
思わず落としそうになった買い物袋をあわてて持ち直した。
「持とうか?」
歩み寄ってきた正史が私の持っていた買い物袋に手をかけた。私の手に正史の冷たくなっていた指先が触れて、ビクッとなった。
急いで手を引っ込め
「大丈夫、大丈夫だから」と買い物袋を後ろへ隠す。
「いいから、持たせろって」
正史は強引に私から買い物袋を取り上げてしまう。
「いいのに」
「いいだろ。前だったら絶対持たされてた」
たしかに、正史に告白する前の私たちは、良く二人で買い物もしたし、家で食事もした。