《クールな彼は欲しがり屋》
「正史、線路の向こう側にあったラーメン屋さん覚えてる?」
「うんうん」
こくこくと頷いて笑顔を見せた正史と私は、
「『辰巳や』」
同時にラーメン屋さんの名前を言って笑った。
「懐かしいな」
「うん、懐かしいね」
正史とは思い出がたくさんある。どれも楽しくてかけがえのない思い出ばかりだ。
大好きだったし、振られた今でも正史のことは嫌いになれない。大切な人だ。
カンカンと遮断機の音がなりだしていた。
遮断機が下りてくるのを私たちは、黙って眺めた。
「懐かしい気持ちを引きずって、今日は、ここまで来ちゃったんだ」
「そう....」
懐かしい気持ち。
私と正史をつないでいるもの、それは懐かしい思い出だ。
正史にとって、私は懐かしい思い出の中に存在する人間なんだって、そう確信できた。
「さっき彼女と大喧嘩してさ、気がついたら懐かしいケイのところに足がむいてた」
「正史が喧嘩?」
信じられない。正史は、温厚で私たちは喧嘩したことがなかった。
「もし....あの日、コクられたあと、ケイを選んでたら人生違ったのかな、なぁんて甘い考えを持ってきたんだ。今となったら確かめるすべもないのに」
「....うん」
電車の車両が重そうな音を立てて目の前を通りすぎていく。
「ごめんな、傷つけたのに」
「ううん。彼女と喧嘩したっていうのを聞けて良かった」
「え?」
「やっぱり、私は....きっと正史の彼女には、なれなかったんだと思う。私たち喧嘩したことなんて一度もなかったじゃない?正史は、いつも優しかったから。どこかで正史は、私に気を使ってたんじゃないかな」
「そんなことないけどな」
「ううん。お互いに気がつかなかっただけだよ。正史は今付き合ってる彼女には、きっと素の自分を見せられてるんじゃないかな?」
正史がハッと目を見張るようにして私を見た。
「うんうん」
こくこくと頷いて笑顔を見せた正史と私は、
「『辰巳や』」
同時にラーメン屋さんの名前を言って笑った。
「懐かしいな」
「うん、懐かしいね」
正史とは思い出がたくさんある。どれも楽しくてかけがえのない思い出ばかりだ。
大好きだったし、振られた今でも正史のことは嫌いになれない。大切な人だ。
カンカンと遮断機の音がなりだしていた。
遮断機が下りてくるのを私たちは、黙って眺めた。
「懐かしい気持ちを引きずって、今日は、ここまで来ちゃったんだ」
「そう....」
懐かしい気持ち。
私と正史をつないでいるもの、それは懐かしい思い出だ。
正史にとって、私は懐かしい思い出の中に存在する人間なんだって、そう確信できた。
「さっき彼女と大喧嘩してさ、気がついたら懐かしいケイのところに足がむいてた」
「正史が喧嘩?」
信じられない。正史は、温厚で私たちは喧嘩したことがなかった。
「もし....あの日、コクられたあと、ケイを選んでたら人生違ったのかな、なぁんて甘い考えを持ってきたんだ。今となったら確かめるすべもないのに」
「....うん」
電車の車両が重そうな音を立てて目の前を通りすぎていく。
「ごめんな、傷つけたのに」
「ううん。彼女と喧嘩したっていうのを聞けて良かった」
「え?」
「やっぱり、私は....きっと正史の彼女には、なれなかったんだと思う。私たち喧嘩したことなんて一度もなかったじゃない?正史は、いつも優しかったから。どこかで正史は、私に気を使ってたんじゃないかな」
「そんなことないけどな」
「ううん。お互いに気がつかなかっただけだよ。正史は今付き合ってる彼女には、きっと素の自分を見せられてるんじゃないかな?」
正史がハッと目を見張るようにして私を見た。