《クールな彼は欲しがり屋》
「リベンジだと?」

「はい、課長がお忙しくて、それに、時間がなくて、予定がぎっしりなのはわかってます。だけど、私は、そのお、すき焼きのリベンジをしたくて!」  

「......」

相手が無言だと気持ちが折れそうになる。

その気持ちにカツを入れて、どうにかやる気を奮い立たせた。
 
「さっき、沢田課長は時間がとれるかどうかくらいは調べてやるって言ってたので..その、すき焼きのリベンジが出来るか、今、予定を見てもらえませんか?」


「....スケジュールは、今年いっぱい真っ黒だ。残念だが満杯だ」

予想していた答えのひとつだ。
断られても仕方がない。

胸がいたんだし、気持ちも凹んだ。断られ思っていたよりショックを受けていた。

「あ、はい、そ、そうですよね。わかりました」
声が沈まないように努力した。そしたら、声が震えてしまっていた。

「あー待てよ、唯一時間が取れる時があるにはあるなぁ」

「本当ですか?」

「喜んでるのか?」
相変わらず冷静な口調でいながら、私を窺っている様子は少し意地悪に感じる。きっと、わざとだ。

「いえ、...そ、それでいつなら空いてるんですか?」

「いまからすぐなら時間が取れそうだ。どうする?」

いつも買い物をするコンビニの前を通り、

「いまからですか?あの沢田課長は、今どこらへんですか?」
あまり、わかれてからさほど時間はたっていない。
だが、タクシーに乗っていたら、かなり遠くへいってしまっているはずだ。


角を曲がって自分のマンションが見える場所にきて驚いた。

マンションの前に買い物袋を下げた人がいるのが見えるのだ。
足を止めて、その人影に目をこらす。

あれって、まさか。



「慶子の前にいる」

スマホから沢田課長の低くて私をゾクッとさせてしまう声が聞こえてきた。

< 81 / 106 >

この作品をシェア

pagetop