《クールな彼は欲しがり屋》

やっと、すき焼きの下準備を始めることになった。

恋愛マラソンは、初めから過酷だった。

大体はじめから、ペースは沢田課長が握っていた。

マラソンを先導する白バイ隊員みたいな沢田課長。

まず、私が言う前に
「突然来たから、中を片付けたいだろ?」と言って部屋の外に待機してくれた。

靴は揃えて上がるし『失礼して』とか『あがるぞ』でもなく、意外性のある「お邪魔します」という沢田課長らしくない可愛らしい挨拶により恋愛ポイントが、うまく加算されていく。

更に料理前に髪をゴムでまとめようとしたら、
「俺がやってもいいか?」と言って後ろに立ち私の髪をやさしくまとめてくれた。

その流れでエプロンまでつけてくれて、なんだか本当に恋人みたいな気分になってくる。

ヤバい。

私ってば、ペース配分がうまく出来てない。
この段階ですでに息切れ状態だ。


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