《クールな彼は欲しがり屋》
「なんだよ、その目」

「よく覚えてますね、一年前の下着まで」
急いでブラウスのボタンを閉める。

「ま、俺の記憶力は確かだから。可愛いよ、それ。俺は好き」

「い、今更フォローされてもこっちは、相当恥ずかしいだけですよ、一年前の下着と同じだなんて言われたら」
下着が少ない女みたいで、みっともない。

「そうか?悪気はない。物持ちがいいのは良いことだ」
出た。また悪気はないとか言えば誤魔化せると思ってるんだから。


「私は恥ずかしいです」
身体が熱くてたまらない。

恋愛マラソンって、なんて過酷なんだろう。
ランニングだけのはずが、途中でハードルがいくつも出てくるし。

おまけに恥ずかしいときている。


すき焼きをよそってくれた塩顔イケメンな沢田課長は、笑顔で「うまい」と連呼してすき焼きを堪能している。

私、ちゃんとゴール出来るのだろうか。

恋愛マラソンの折り返し地点。

目の前には、緩やかな上り坂がずっと遠くまで続いて見えていた。
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