《クールな彼は欲しがり屋》
こんなんじゃ、正史の時と同じだ。
気を使ってもらうばかりで、私は甘えているだけ。

何にも考えないうちに素敵なイブを過ごさせてもらうだけ。

私は何もしていない。

健太郎にばかり骨をおらせて、自分はついていくだけ。

『だけ女』だ。

そんな女は、つまらないし、全然素敵じゃない。


「嫌じゃない。でも、私はまだ健太郎に何にもしてあげられてない」

「ん?なんだ、それ」

「健太郎にばっかり、お店やら何やら予約してもらって準備してもらってんのに、私は何にもしてない」

「いーんだよ。俺が好きでやってんだから」

「健太郎にばかり、骨をおらせて自分は、らくして楽しんで申し訳なくて」

涙がでそうだ。

せっかくのイブなのに。
素敵なイブを健太郎にも過ごしてもらいたい。

「だからね、申し訳ないんだけどホテルをキャンセルしてもらってもいい?」

「え、なんで?嫌じゃないんだろ」

私は、こくこくと頷いた。

「私のわがまま聞いてくれない?」

唇を噛み締めて、必死に泣き出しそうな自分の感情をコントロールしていた。

素敵なイブのためだ。

泣いたりしたら、せっかくの素敵が台無しになっちゃう。

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