《クールな彼は欲しがり屋》
ホテルをキャンセルしてもらって私は自分のマンションに健太郎を連れてきた。
「慶子のうちだな」
タクシーを降りて健太郎が古びたマンションを見上げた。
「うん、ごめんね」
「いや、俺はいいよ。慶子と一緒にいられれば」
手を繋いで階段で2階へ上がる。
今日は、部屋を通りすぎたりしない。へまは、やらかさない。
自分の部屋の前について深呼吸をした。
鍵を開けてから健太郎へ顔を向けた。
「ドア開けてみて」
「ああ」
ドアを開けた健太郎が
「オーすごい」と声をあげた。
玄関にセットしたバルーンのアーチ。
廊下の両脇に設置した電飾が点灯している。
良かった。風船もつぶれてないし、電飾も綺麗。
昨日の夜から設置して、朝から電飾の光はつけっばなしで出てきた。
「入ってみて」
健太郎の背中を押して、中へ進む。
リビングにはクリスマスツリー、壁にも電飾。
部屋の全てが、うざいくらいにキラキラしていた。
少し派手すぎたかな。
健太郎を椅子に座らせ、外国のクリスマスソングを流した。
ラストクリスマスが一番に流れ、
「あっ」と私は声を上げていた。
ラストクリスマス?
これって有名で定番なクリスマスソングだけど、もしかして、歌詞はお別れの奴だったりしない?
今の今まで気がつかなかった。
これから、恋を本格的に始めようって日に、なんたる不吉なセレクトをしたんだろう。
あたふたと音を止めて、苦笑いをして誤魔化しキッチンへ向かった。