イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
 


よりにもよってそのポーチを見つけたのは、クラスでもうるさくて乱暴者だった男子ふたり。
大浴場のあるフロアの廊下で、ポーチから取り出した下着を面白がって振り回し『これ誰のだよ! 持ち主出て来いよ!』と騒ぎ立てていた。

とてもじゃないけどそんな中に名乗り出られるはずもなく、離れた場所でおろおろしながら見ていると、彼らはポーチの隅っこに書いてあった名前に気付いてしまった。

『森下って、これあの地味女のじゃん!』
『あいつ眼鏡のくせに、こんなヒラヒラした下着付けてんの?』
『似合わねぇ!』

ゲラゲラと楽しげに笑うふたりとは対照的に、私は血の気が引き膝が震えた。
悔しさや怒りよりも、悲しみが勝りその場から動けなくなる。


もうやだ……。
ここから逃げ出したい。

修学旅行の途中だけど、今すぐ家に帰ってベッドの中に潜り込んで泣きたい。



そう思った時、廊下の向こうから誰かが歩いてきた。


 
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