イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
「どうした?」
その問いかけに、里奈が笑顔を作り首を横に振った。
「なんでもないよ。お姉ちゃんちょっと具合がわるいみたい」
「佳奈、大丈夫か?」
里奈の言葉に、拓海がこちらをふりかえる。
キッチンに近づこうとした拓海に、私は慌てて首を横に振った。
「大丈夫。ちょっと寝不足なだけかも」
苦しい言い訳をしながら、無理やりに笑った。
「私、今日は帰るね」
「じゃあ、車で送ってく」
鍵を手にしようとした拓海に、「いいから」と言いながら逃げるように玄関に向かう。
「せっかく里奈が料理を持って来てくれたんだから、気にしないで」
「待てよ」
拓海の横を通り抜けようとしたとき、ぐっと手首をつかまれた。
拓海の大きな手は、簡単に私の手首を一周してしまう。
力強い感触に、ドキドキしてしまう自分がいた。
「……ごめん。ひとりで帰りたい」
拓海への恋愛感情を振り払うようにうつむいて固い声で言うと、手首に回った指の力が緩んだ。