イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
私、森下佳奈と窪田拓海は、幼稚園からの腐れ縁の幼馴染だ。
都市の中心部から程よく離れたベッドタウン。という売り込みで次々に宅地開発された新興住宅街の一角に、偶然並んで家を建てたという縁で、私と拓海は物心ついたころから家族同然で育てられてきた。
幼稚園からはじまり、小中高と同じ学校に通い、さすがに大学で進路は分かれたけど、なんの因果か就職先が偶然また一緒になり、二十五年という人生の大半を一緒に過ごしてきた。
幼いころおねしょをして怒られたこと。
小学生の夏休みの最終日、宿題が終わらなくてふたりで泣きべそをかきながら必死に片付けたこと。
中学生の時、拓海がこっそり煙草を隠し持っているのを見つけた私が慌てておばさんに言いつけて、拓海と大喧嘩になったこと。
恥ずかしいことも、情けないことも、お互いに全部知っている。そんな仲だ。
幼馴染どころか、もう兄妹みたいにお互いを知りつくした相手にこんなことを頼んだのには、もちろん深い訳がある。
とてもひとことじゃ説明できない、『ある理由』が。