イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
 

じゃあ『抱いて』って頼むのはどうだろう。突然私がそんなことを言い出しても、拓海は冗談だろって相手にもしてくれない気がする。
適当な理由をつけてお願いしたら、話くらいは聞いてくれるかもしれないけど、素直に『いいよ』なんて頷いてくれるはずがない。
バカにされて、からかわれて終わるに決まってる。


そこまで想像してため息をついた。

どっちもやだ。絶対やだ。だけど、どうしてもどちらか選べと言われたら……。

「抱いてくださいって頼む方ですかね」

苦々しい表情で答えると、スミレさんが顔を輝かせた。

「佳奈ちゃんえらい! 初恋の窪田くんに抱いてもらう覚悟を決めたのね!」
「いや、微塵も決めてません! どちらか選べって強いられたから、仕方なくどっちがいいか言っただけです!」
「よし、乾杯しよ! 乾杯!」
「スミレさん、人の話を……っ!」
「すみませーん! 大ジョッキでビールふたつ!」
「だからっ!!」
「今日は祝杯だね!」
「人の話を……っ!!!」
「佳奈ちゃんの勇気に、かんぱーいっ!」



 




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