イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
「川口さん!」
「信彦、なに勝手に乙女の会話を盗み聞きしてるのよ」
「盗み聞きって。聞かれたくない話なら、人が寝てる横で大声で話すなよ」
呆れたように言いながら、川口さんが立ちあがる。
がっしりとした長身に短い髪型が爽やかな川口さんが、私たちを見て意地悪に笑った。
川口信彦さんはスミレさんの恋人で、スミレさんと同じく私より四歳年上の二十九歳だ。
ふたりは一緒に暮らしているんだけど、さっきまで川口さんは開いた雑誌を顔の上に乗せソファでぐっすり熟睡していたから、つい存在を忘れて話し込んでしまった。
全て聞かれていたんだと思うと、恥ずかしさに顔が熱くなる。
「なんとなく話は聞かせてもらったけど……」
川口さんは私たちが向かい合って座るダイニングテーブルに近づいてきた。
私の横を通り過ぎ、スミレさんの背後まで行くと大きな手をスミレさんの綺麗な髪に近づけた。
「とりあえず、一番悪いのはこいつだな」
そう言ったかと思うと、握ったこぶしでスミレさんのこめかみを両側からグリグリとえぐる。