イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
「お姉ちゃんがいやなら、私が作りに行くよ!」
ぶんぶんぶんぶん首を横に振り続ける私に代わって、里奈が元気に手を上げ立候補する。
「里奈。あんたは学生なんだから、料理よりも勉強を真面目にしなさい。それじゃなくても、おしゃれと遊びのことにしか興味がないんだから」
手を上げた里奈を母がぴしゃりとしかりつけると、里奈はイタズラがみつかった猫みたいな顔をして首をすくめた。
「佳奈。俺の家に料理を作りに来るの、そんなにいやか?」
そう言って拓海がこちらを見る。
穏やかな口調だけど試すような視線が鋭い。
「いやだ……」
私がぽつりと言って口をつぐむと、拓海の視線が冷たくなる。
「ふーん。そっか」
納得したかのように微笑み、瞬きをする。
そしてテーブルに頬杖をついて上目遣いでこちらを見た。
「じゃあ、昨日のこと……」
そこまで言って言葉を切ると、拓海は声を殺し口元だけを動かす。
――『バラすぞ』
確かに今、唇だけでそう言った。