イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
「ただいまー」
家に帰ると二階の部屋から出てきた里奈が、階段を駆け下りてきた。
「おかえり、お姉ちゃん早かったね。車の音聞こえたけど、拓海くんに送ってもらったの?」
「あー、うん」
うなずきながら玄関で靴を脱ぐ。
「どうだった?」
「どうだったって」
なにが? 超絶まずい酢豚の話でも聞きたいの?
私が首をかしげていると、にやにやと意味深な笑み。
「よかった。その表情じゃ、なにもなかったみたいだね」
バカにしたような口調に、むっとしながら聞き返す。
「なにもなかったって、どういう意味よ」
「だって、男の人の部屋でふたりきりなんて、なにがあってもおかしくないじゃん」
「はぁ!?」
里奈は、驚いて目をむいた私を足元から頭まで値踏みするように見て、胸をなでおろす仕草をする。
「ま。こんな地味でかわいげもないお姉ちゃんに、拓海くんが変な気をおこすわけないよね」
確かに、拓海が私なんかに手を出すはずもないんだけど、わざわざそれを妹に言われるとむっとする。
私は仏頂面でリビングのドアを開け、テレビを見ている母に声をかける。
「お母さん! 私に料理教えて!」
するとソファーに座る母が驚いたようにこちらをふりかえった。
「あら。佳奈が珍しくやる気になったわね」
次の金曜日は、拓海が驚くくらい美味しい料理をつくってやるんだ。