イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
「佳奈ちゃん、この書類がどうかした?」
「あ、お疲れ様です。これ申請書と領収書の日付が違うんです」
私が日付を指さすと、川口さんが「あ、本当だ」とうなずいた。
「ごめん、担当に言って修正して届けさせるよ。急ぐ?」
「いえ、明日持って来てもらえれば大丈夫です」
「了解」
私の手から書類を受け取った川口さんが、ついでのように私の頭をぐりぐりと撫でる。
こうやって頭をなでられるとどういう反応をしていいのかわからなくて、体をこわばらせ無表情でじっとしていると、見ていた営業アシスタントの女の子に笑われてしまった。
「川口さん、総務の子が困って固まってますよ。そうやって馴れ馴れしく触って、セクハラだって訴えられてもしりませんからね」
「え? 佳奈ちゃん、いやだった?」
冗談交じりの彼女の言葉に、川口さんが慌てた様子で私の顔を覗き込む。
私は平静をよそおいながら、眼鏡を押し上げ首を横に振る。