イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
「うれしくはないですけど、訴えようと思うほどいやでもないので大丈夫です」
私の素直な言葉に、川口さんがふきだした。
「あー、ほんと佳奈ちゃんのこういうとこ可愛いんだよなぁ」
そう言われ、複雑な気持ちで首をかしげる。
川口さんの『可愛い』は、女性としての可愛げを言っているんじゃないと分かっているから、いちいち照れたりはしないけど、居心地が悪いしリアクションに困る。
「では、よろしくお願いします」
頭を下げて、そそくさと逃げ出す。
パタパタとフロアを出ていこうとすると、階段ホールから誰かがこちらを見ているのに気が付いた。
「あ、拓海……」
ちょうど外回りから帰ってきたのかな。
金曜日に家で会った時のリラックスした雰囲気とは違うスーツ姿の拓海に、条件反射のように胸が高鳴ってしまう。
落ちつけ落ちつけ。
ただ顔を合わせただけで、なにときめいてドキドキしてるんだ。
心の中で自分を戒めながら、拓海に軽く頭を下げさっさと総務へ帰ろうとする。