初詣をあなたと
メインイベントを悲しくも終えた俺は、甘くて温かい飲み物の屋台を見つけた。
実は、甘党なのだ。
あと、少し落ち着きたい、という想いもあった。
「甘酒、飲む?」
「あ、うん」
すると、彼女は慌てて、鞄から財布を取り出そうとした。
俺は、それを止めた。
「大丈夫! これくらいなら、俺が奢るからさ」
何千、何万単位なら、さすがに考えたが、200円、300円くらい大したことはない。
財布をしまわせた。
その時も彼女は、申し訳なさそうな顔をして「ごめん、ありがとう」と呟いた。
近頃の子には珍しい、君のそんな控え目なところも、俺は素敵だと思う。
出店の横で甘酒に口をつけようとすると、彼女はちびちびと甘酒を啜っていた。
もしかして、猫舌なのか?
またそんなところもかわいいと思い、微笑まずにはいられなかった。
「大丈夫? 寒くない?」
「うん、平気。温かいの飲んでるから、ポカポカしてる」
「俺も」
お互い、あまり飲めていないのに。
俺に至っては、まだ一口も飲んでいない。
それでも温かい、と言ってくれた彼女の頬は、確かに赤く染まっていた。