彼の甘い包囲網
兄が有澤さんと私の荷物を車のトランクに積み込み、私達は帰路に着いた。
助手席に有澤さんが座り、私は後部座席に座っている。
助手席で寝られたら俺が眠くなると言われ、私はおとなしく従って、この席にいる。
兄と有澤さんは私にはよくわからない話題で談笑している。
二週間程離れただけだけれど、既に懐かしい景色を車窓から一人、堪能していた。
「ええと、楓、ちゃん?
ごめんね、送ってもらって」
不意に有澤さんに話しかけられた。
「あっ、いえっ、気にしないでください」
慌てて返事をすると。
「まさか柊の妹さんがこんなに可愛い女の子だったなんてね。
もっと早くに紹介してもらえばよかったな」
「お前には紹介したくない」
「何でだよ」
「お前はややこしいんだよ。
周りの環境、整えてからにしろ」
運転に集中しつつ、眉間に皺を寄せた兄の表情がバックミラーに映る。
「……迷惑、かけるつもりはないんだけどなあ」
そう言った有澤さんの表情が一瞬曇った気がした。
その返事に、私はその端正な横顔を思わず見つめてしまった。
「楓ちゃんは?
彼氏、いるの?」
「えっ……」
聞かれて焦る。
兄は小さく肩を竦めた。
「馬鹿みたいに執着されてる相手ならいるぞ」
兄が適当なことを言う。
「ちょっ……お兄ちゃん!」
「へぇ、そうなんだ。
やっぱりね、可愛いもんなぁ。
どんな相手?」
意味のわからない納得をされ、さらに質問されて。
「……誤解です!」
そう言って突っぱねた。
助手席に有澤さんが座り、私は後部座席に座っている。
助手席で寝られたら俺が眠くなると言われ、私はおとなしく従って、この席にいる。
兄と有澤さんは私にはよくわからない話題で談笑している。
二週間程離れただけだけれど、既に懐かしい景色を車窓から一人、堪能していた。
「ええと、楓、ちゃん?
ごめんね、送ってもらって」
不意に有澤さんに話しかけられた。
「あっ、いえっ、気にしないでください」
慌てて返事をすると。
「まさか柊の妹さんがこんなに可愛い女の子だったなんてね。
もっと早くに紹介してもらえばよかったな」
「お前には紹介したくない」
「何でだよ」
「お前はややこしいんだよ。
周りの環境、整えてからにしろ」
運転に集中しつつ、眉間に皺を寄せた兄の表情がバックミラーに映る。
「……迷惑、かけるつもりはないんだけどなあ」
そう言った有澤さんの表情が一瞬曇った気がした。
その返事に、私はその端正な横顔を思わず見つめてしまった。
「楓ちゃんは?
彼氏、いるの?」
「えっ……」
聞かれて焦る。
兄は小さく肩を竦めた。
「馬鹿みたいに執着されてる相手ならいるぞ」
兄が適当なことを言う。
「ちょっ……お兄ちゃん!」
「へぇ、そうなんだ。
やっぱりね、可愛いもんなぁ。
どんな相手?」
意味のわからない納得をされ、さらに質問されて。
「……誤解です!」
そう言って突っぱねた。