彼の甘い包囲網
護衛って……。

話の次元が違いすぎる。

千春さんは涼しい顔でロイヤルミルクティーを綺麗な所作で飲んでいる。


「……で。
美坂建設のお嬢さん、瑠璃さんの話ね」

先程までとは一転して真剣な声音の千春さんに私も佇まいを直す。

千春さんの瞳に浮かぶ困惑に不安が過る。


「……奏多はモテてたって言ったでしょ?
何人かは、奏多に本気で執心する女の子がいたの。
その筆頭が瑠璃さんだった。
……幸か不幸か、仕事関係でも関わりがあってね。
口約束だけど婚約者に、なんて話が出たこともあったの。
……彼女は希望を持っていたのね」


千春さんは言い淀む。

奏多が女の子達と遊んでいたことは聞いていたし、知っている。

あの容姿に、頭脳明晰、蜂谷グループの御曹司ともなれば周囲が放っておかないこともわかる。


……恋は残酷だ。

本気であればあるほど、一番になりたくなる。

その人の唯一になりたいと願う。

その瞳に映る人は自分だけでありたいと。

どれだけ強く想っても選んでもらえるとは限らない。

その腕に守られて、選ばれる人はたった一人。



今、私は選んでもらえたけれど、これから先ずっと奏多に選んでもらえるのだろうか。

そもそもどうして奏多は私を選んでくれたのだろうか。

そのことをいつも考える。

奏多にとって私という存在はプラスになるのかと。
< 171 / 197 >

この作品をシェア

pagetop