彼の甘い包囲網
「……もう、嫌だ!
待たない、よ!
待つの、やだよ、寂しいよ……」
子どもみたいに駄々をこねる私に、奏多は小さく苦笑した。
「うん、そうだな。
頼むからもう少しだけ待ってくれ。
お前のところに帰るから。
帰ったらもう絶対に離さないから」
「……本当……?
私、奏多の役に何にも立たないよ……?
それでもいいの?
後悔しない?」
「するわけないだろ。
楓がいてくれるだけで俺がどれだけ幸せかわかるか?
俺を特別扱いしないお前がいてくれる、それだけで充分なんだよ。
蜂谷グループの俺の手は抱えなきゃいけないものが他にもあるけど、男としての俺の手はお前を抱き締めるためだけにあるから。
覚悟しとけよ?
お前はその涙も全部、俺のものだから」
甘い甘い声。
私の涙が止まる。
「楓、返事は?」
蜂蜜みたいに蕩けそうな声が耳朶に響く。
頬がカアアッと一気に赤く染まる。
「う、うん」
鼓動が一気に速くなる。
「忘れるなよ?
お前を全部貰うからな」
「え、ええっ?」
クスクスと笑う奏多はすっかりいつもの奏多だ。
「え、あの、お手柔らかに……」
「何だ、それ」
奏多がブハッと吹き出す。
「愛してるよ、楓。
誰よりも何よりも」
止めの一言を押し出されて。
私の心臓はもう壊れそうだ。
「誰が何を言っても、俺の言葉だけを信じて待ってて」
「……うん」
やっぱり泣いてしまったけれど。
瞼は大惨事になってそうだけど。
私の心からは数時間前の痛みが嘘みたいにひいていた。
「お前以上に大事なもの、俺にはないから」
ああもう、この人は。
私の心臓を破壊するつもりだ。
待たない、よ!
待つの、やだよ、寂しいよ……」
子どもみたいに駄々をこねる私に、奏多は小さく苦笑した。
「うん、そうだな。
頼むからもう少しだけ待ってくれ。
お前のところに帰るから。
帰ったらもう絶対に離さないから」
「……本当……?
私、奏多の役に何にも立たないよ……?
それでもいいの?
後悔しない?」
「するわけないだろ。
楓がいてくれるだけで俺がどれだけ幸せかわかるか?
俺を特別扱いしないお前がいてくれる、それだけで充分なんだよ。
蜂谷グループの俺の手は抱えなきゃいけないものが他にもあるけど、男としての俺の手はお前を抱き締めるためだけにあるから。
覚悟しとけよ?
お前はその涙も全部、俺のものだから」
甘い甘い声。
私の涙が止まる。
「楓、返事は?」
蜂蜜みたいに蕩けそうな声が耳朶に響く。
頬がカアアッと一気に赤く染まる。
「う、うん」
鼓動が一気に速くなる。
「忘れるなよ?
お前を全部貰うからな」
「え、ええっ?」
クスクスと笑う奏多はすっかりいつもの奏多だ。
「え、あの、お手柔らかに……」
「何だ、それ」
奏多がブハッと吹き出す。
「愛してるよ、楓。
誰よりも何よりも」
止めの一言を押し出されて。
私の心臓はもう壊れそうだ。
「誰が何を言っても、俺の言葉だけを信じて待ってて」
「……うん」
やっぱり泣いてしまったけれど。
瞼は大惨事になってそうだけど。
私の心からは数時間前の痛みが嘘みたいにひいていた。
「お前以上に大事なもの、俺にはないから」
ああもう、この人は。
私の心臓を破壊するつもりだ。