彼の甘い包囲網
「……待たせてごめん」
腕の中から見上げた焦げ茶色の瞳は相変わらず綺麗で。
奏多の声が私の耳朶を震わせる。
形のいい唇が私の額に小さくキスを落とした。
その感触に。
その温もりに。
カアアッと顔が火照った。
「……よかったね、楓」
温かなその声に。
ハッと我に返った。
「お久しぶりです、蜂谷さん。
帰国されたんですか?」
余所行きの笑顔を貼り付けて、紗也が微笑んだ。
「あー……紗也、ちゃん?
綺麗になったね」
ニッコリと魅惑的な笑みを返し、離れようともがく私を胸に閉じ込めたまま、奏多が返事をした。
「ありがとうございます。
楓には及びませんけど。
彼氏もいない、フリーの楓は引く手数多でモテモテなので」
笑顔を崩さない紗也。
それでも言葉の端々に滲む刺々しさが怖い。
奏多相手に相変わらず物怖じしない紗也。
「……相変わらず手厳しいね」
これまた一切動じずにフワリと微笑む奏多。
その甘い色気が漂う笑みに流石の紗也も少し赤面する。
「ねえねえっ、もしかして、この人が?」
事の成り行きを見守っていた鈴ちゃんがここぞとばかりに口を挟む。
紗也が無言で頷く。
誰、と私に視線で奏多が尋ねた。
「初めまして!
楓ちゃんと紗也ちゃんの友達の早見鈴です。
噂通りのイケメンですね!」
この場にいる女子の誰もが思っていながら口に出せなかった言葉を堂々と伝える鈴ちゃんはある意味、すごい。
「ありがとう」
妖艶な微笑みを浮かべる奏多。
微笑んでいるだけなのに放たれる色気が尋常じゃない。
悔しいけれど見惚れてしまうくらいに、カッコイイ。
四年前よりも、もっと。
何とか腕から逃れ、距離をとろうとする私の手をガッチリ掴んで、すかさず指まで絡めてくる奏多。
長い骨ばった指が私の指に触れる。
触れられた指がジンワリと熱を持つ。
ドクン、とまたひとつ鼓動が大きな音をたてた。
このままじゃ心臓が壊れてしまう。
指を離そうと力を込めるけれど、奏多の指はびくともしない。
こんなに細くて長い指なのに。
悔しさ紛れに見上げた横顔は私の頭ひとつぶん以上はゆうに高い位置にある。
記憶よりも大人びた横顔に。
心が、波打つ。
待ってなんかいない。
待ちわびてなんかいない。
絶対に。
腕の中から見上げた焦げ茶色の瞳は相変わらず綺麗で。
奏多の声が私の耳朶を震わせる。
形のいい唇が私の額に小さくキスを落とした。
その感触に。
その温もりに。
カアアッと顔が火照った。
「……よかったね、楓」
温かなその声に。
ハッと我に返った。
「お久しぶりです、蜂谷さん。
帰国されたんですか?」
余所行きの笑顔を貼り付けて、紗也が微笑んだ。
「あー……紗也、ちゃん?
綺麗になったね」
ニッコリと魅惑的な笑みを返し、離れようともがく私を胸に閉じ込めたまま、奏多が返事をした。
「ありがとうございます。
楓には及びませんけど。
彼氏もいない、フリーの楓は引く手数多でモテモテなので」
笑顔を崩さない紗也。
それでも言葉の端々に滲む刺々しさが怖い。
奏多相手に相変わらず物怖じしない紗也。
「……相変わらず手厳しいね」
これまた一切動じずにフワリと微笑む奏多。
その甘い色気が漂う笑みに流石の紗也も少し赤面する。
「ねえねえっ、もしかして、この人が?」
事の成り行きを見守っていた鈴ちゃんがここぞとばかりに口を挟む。
紗也が無言で頷く。
誰、と私に視線で奏多が尋ねた。
「初めまして!
楓ちゃんと紗也ちゃんの友達の早見鈴です。
噂通りのイケメンですね!」
この場にいる女子の誰もが思っていながら口に出せなかった言葉を堂々と伝える鈴ちゃんはある意味、すごい。
「ありがとう」
妖艶な微笑みを浮かべる奏多。
微笑んでいるだけなのに放たれる色気が尋常じゃない。
悔しいけれど見惚れてしまうくらいに、カッコイイ。
四年前よりも、もっと。
何とか腕から逃れ、距離をとろうとする私の手をガッチリ掴んで、すかさず指まで絡めてくる奏多。
長い骨ばった指が私の指に触れる。
触れられた指がジンワリと熱を持つ。
ドクン、とまたひとつ鼓動が大きな音をたてた。
このままじゃ心臓が壊れてしまう。
指を離そうと力を込めるけれど、奏多の指はびくともしない。
こんなに細くて長い指なのに。
悔しさ紛れに見上げた横顔は私の頭ひとつぶん以上はゆうに高い位置にある。
記憶よりも大人びた横顔に。
心が、波打つ。
待ってなんかいない。
待ちわびてなんかいない。
絶対に。