彼の甘い包囲網
「良かった!」


パアアッと輝く笑顔を見せてくれる千春さん。

元々綺麗な人だけれど、何よりも豊かな表情が素敵で。

文句なしに憧れる。


「……私も千春さんみたいな素敵な女性になりたいです」


自嘲気味に呟く私に。

千春さんは瞠目した。

「何言ってるの!
楓ちゃんは今のままで、充分素敵だし可愛いわ」

フフッと妖艶に微笑んで、千春さんは続けた。

「私も奏多もあなたよりは年上だから。
経験してきたことも、知っていることもあなたよりは多い。
だけど、そういうものじゃなくて、後から幾らでも手に入れれるものじゃなくて、楓ちゃんしか持っていないものがあるの」

「……え」

「……楓ちゃんみたいに弱い部分を曝け出すことってスゴいことなのよ。
大人になると虚勢を張りたがるから」

厄介よね、と千春さんは奏多によく似た魅力的な笑顔で笑った。

正直であることを褒めてくれたのかな、と思って私は笑顔を返した。


「ああ、もう、本当に素直ね、楓ちゃん!
アイツには勿体ないわ。
あの愚弟はすぐつけあがるし、執着心も強いから焦らしてやって」

ニッ、と面白そうに千春さんが口角をあげた。

「悩んだらいつでも相談してね!
これ私の連絡先」

「あ、ありがとうございます……わ、私、兄しかいなかったので千春さんみたいな素敵な女性とお友達になれて嬉しいです」

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