彼の甘い包囲網
「口に合うといいんだけど」

朗らかに笑いながらママは奏多にほうじ茶をすすめた。

「とても美味しいです。
最近和食を口にしていなかったらすごく嬉しいです」

ニコニコと上機嫌で笑みを浮かべる奏多。

「まあ、よかったわ」

三人で囲む食卓は賑やかだけど、何処か居心地が悪い……。

今日のメニューは肉じゃがと味噌汁と奏多が好きな親子丼、香の物、等。

綺麗な所作と箸使いで食事を摂る奏多は。

一見、何処にでもいる二十代男子のようなのに、背負うものや育ってきた環境の違いを感じさせる。

何よりもそのずば抜けた外見がまず稀有だけれど。


「ごめんね、奏多くん。
楓をみてもらっちゃって。
ありがとう、助かったわ」

「あ、おばさん、そのことなんですけど……。
楓とさっき話してたんですが、定期的に教えれたと……」

「うぅ!!」

「まぁっ、いいの?!」


前者は私の吃驚の声、後者はママの歓喜の声。

思わずむせそうになり、箸を置いた。

当の奏多はご機嫌に穏やかな笑みを浮かべている。


「楓と相談してお互いの時間が空いている時に、ってなるとは思うんですが……」

「十分よ、本当に有り難いわ~ホラ、楓。
ちゃんとお礼を言いなさい。
でも、本当にいいの?
奏多くん、忙しいでしょ?」

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