彼の甘い包囲網
「大丈夫ですよ。
楓にも約束していましたから」

余裕の笑みを浮かべる奏多。

「いや、あの……ほ、本当に?
無理しないほうが、仕事とか……」

逆に私が焦る。

話し合ってなんてないし、何でいきなりそんな話に……!

しかもママは盛り上がっているし!

二人きりでなんて緊張するし、無理、無理っ。


「ごめんなさいねぇ、奏多くん。
是非お願いするわ。
その代わりといってはなんだけど、晩御飯いつでも食べに来てね!」


私の気持ちを完全に無視して、グイグイとママは話を進めて決めてしまった。


「助かります。
じゃあ、楓。
早速後で、日程を確認しよう」


有無を言わせない魅力的な笑顔を奏多が私に向けた。

私は心の中で盛大な溜め息を吐いた。
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