彼の甘い包囲網
「……楓のそういう無自覚なとこが俺には一番こたえるんだよ。
キスくらい貰ってもバチ当たんないだろ」


そう言って再び奏多は熱でけぶる瞳をゆっくり閉じて、私の唇の輪郭を舌でペロリと撫でて。

何度も私に口付けた。

甘く優しいキス。


私は何にも言い返せずに。

奏多のカットソーをただ握っていることしかできなかった。



ねえ、奏多。

どうしてそんなキスをするの。

どうして私をそんなに大事にしてくれるの。

奏多は私をどう思っているの?

私は奏多の何?



肝心な、一番聞きたいことはいつも喉の奥で止まってしまって。

言葉にならない。


同じ言葉を奏多からぶつけられたら。

私は奏多にどう返したらいいのだろう。

何を言えばいいのだろう。


奏多はそれをわかっているのか、私に言葉を求めないし、聞いてこない。

聞く必要がないと思っているのか。


曖昧なままで。

私達の関係は歪に成り立っていると思うのは私だけだろうか。

……私達はいつまでこのままでいられるのだろう。
< 62 / 197 >

この作品をシェア

pagetop