彼の甘い包囲網
「親父からさっき聞いた」
淡々と柊兄が口火を切った。
「ああ、うん」
想像通りの話の内容だったので、私は軽く頷いた。
「俺はこの家に残るつもりだけど、お前はどうする?
親父もお前を一番心配してた」
「……よくわかんない、何か実感なくて」
パパはいわゆる転勤族で、私は物心ついた時から数回引っ越しをしていた。
一応出身地は関西で、両親の祖父母も関西に在住している。
パパ自身も、もう暫くは遠方の転勤はないだろうと予測してこの辺りで自宅購入をママと検討していた矢先の辞令だった。
パパにしてみても寝耳に水だっただろう。
パパのことを考えると良い待遇での転勤、いわゆる栄転になるので喜ばしい話だと言えばそうなのだけれど。
私自身は複雑だった。
前回の転勤は東京都内でまだ中学生だったこともあり、それほど深刻には考えていなかった。
大きな溜め息を吐く。
そんな私の心中を察してか、意外に洞察力の鋭い兄が言った。
淡々と柊兄が口火を切った。
「ああ、うん」
想像通りの話の内容だったので、私は軽く頷いた。
「俺はこの家に残るつもりだけど、お前はどうする?
親父もお前を一番心配してた」
「……よくわかんない、何か実感なくて」
パパはいわゆる転勤族で、私は物心ついた時から数回引っ越しをしていた。
一応出身地は関西で、両親の祖父母も関西に在住している。
パパ自身も、もう暫くは遠方の転勤はないだろうと予測してこの辺りで自宅購入をママと検討していた矢先の辞令だった。
パパにしてみても寝耳に水だっただろう。
パパのことを考えると良い待遇での転勤、いわゆる栄転になるので喜ばしい話だと言えばそうなのだけれど。
私自身は複雑だった。
前回の転勤は東京都内でまだ中学生だったこともあり、それほど深刻には考えていなかった。
大きな溜め息を吐く。
そんな私の心中を察してか、意外に洞察力の鋭い兄が言った。