彼の甘い包囲網
いつも穏やかに微笑んで。

たまに鋭く切り込んでくる鈴ちゃんは、いとも簡単に核心をつく。

「蜂谷さんグッズで武装しているせいもあるけれど。
全然他の男子に靡かないでしょ、楓ちゃん。
この間だって、ゼミの男子にデートに誘われていたのに断ってるし。
それって蜂谷さんと誰かを比較するつもりもないよね?」

ぐ、と言葉に詰まる。

「でも、あれは……」

「中学生じゃないんだから、異性の好意にキガツキマセン、は無しだよ?」

爽快なまでに切り捨てられた。

「もう、そんな拗ねたような顔をしないで。
何で素直に蜂谷さんの懐に飛びこまないの?」

「……私が私に聞きたい、それ」

言い訳を取っ払った私の心は何よりも不安定で、吐き出した声はびっくりするくらいに頼りなかった。

紗也は戸惑ったように瞳を揺らす。

「……奏多が特別、なんてもうずっと前からわかってる……だけど奏多の言う特別、と私の特別の意味が違っているのかな……。
誰かと付き合ったこともないし、誰かを好きになったこともないから奏多の反応がそれだ、なんて明確にわからないよ……」
< 97 / 197 >

この作品をシェア

pagetop