秘書室長と鉄壁女子の攻防戦
お断りします。


「ごめんなさい」

「じゃあ、友だちから…」

「お断りします」

「…あっ、そう」

私は踵を返してその場を立ち去る。

相手は私の背中越しになにか言っているみたいだったけど、聞こえないフリをして足早に逃げた。

これ以上話すことはないし、捕まっても面倒なだけだ。

だって私は相手のことを全く知らない。

仕事で関わることがない部署の人だろうと推察する。

そんな人に告白された。

さっぱり意味がわからない。

そもそもこんな私のどこが好きだと言うんだろうか。

それにしても、一瞬デジャヴかと錯覚した。

こんなこと、もうこれで何度目だろうか。

溜め息をつきながら時計を見ると、12時半になろうとしていた。

「急がなきゃ!」

走って社員食堂に駆け込むと、窓際のカウンターに同期が座っているのが目に入った。

「菜緒!」

小柄で華奢な彼女は振り返ると、フワリと優しく笑った。

「園子、遅かったね。もしかして、また?」

「そう。また」

そのせいで、私のお昼休みは残り30分くらいしか残されていない。



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