秘書室長と鉄壁女子の攻防戦


確か堅物で、基本的に仕事以外のことは話さないって聞いたことがあるような…。

どうしようか…。

なんとかして断らなきゃ。

いっそのこと無視して帰るとか?

こうなったら、なにがなんでも仕事を終わらせて定時で帰ろう。

仕事に集中しよう!

そう決めて、仕事に取りかかった。

「倉橋、悪いな」

「いえいえ、途中まで保存してましたし、なんとかなると思います」

まぁ、人生そんなに甘くはないよね?

順調に仕事を片付けていた私の元に、データが消えたって必死の形相で飛び込んできた部長に、苦笑いで答えた。

本当にタイミングが悪すぎる。

とにかく部長の資料作成をとっとと終わらせよう。

はやる気持ちをどうにか抑えながら、それでもキーボードを叩くスピードは必然と速く、カタカタと入力していく。

「倉橋、本当にすまん」

強面の部長に謝られても、違った意味で怖いんですけど。

なんて、とても口に出して言うことは出来ないけど。

部長の言葉に返事することなく、必死に取りかかった私は、定時を過ぎていたことに気づかなかった。

完成した資料を部長に渡していたタイミングで、その人は現れた。


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