秘書室長と鉄壁女子の攻防戦
「行くって、どこに行くんですか?」
私の疑問に、秘書室長はとんでもない爆弾を落とした。
「デート」
「…はぁ!?」
私の叫び声はフロア中の驚きの声にあっさり掻き消された。
「ほら、行くよ?」
秘書室長は私の手を握って引っ張っていく。
いやいやいや、行くって同意してないし!
「ちょっと待ってください!」
「待たない」
待たないってなに!?
っていうか、この人、堅物なんじゃなかったの!?
無駄なおしゃべりは一切しない真面目なクール系男子って、誰か言ってなかったっけ!?
今、目の前にいる秘書室長は、誰がどう見ても捕らえた獲物は逃がさない肉食系男子って感じだけど!?
「ちょっと秘書室長!?」
握られた手を振りほどこうとしても、びくともしない。
「あ、荷物は?」
急に至近距離で顔を覗かれて、視線が交わった。
なにこれ!?
吸い込まれそうなんだけど!?
眼鏡越しの秘書室長の眼差しは真剣で優しくて力強い。