秘書室長と鉄壁女子の攻防戦
「荷物はデスク…」
目を逸らせないまま、そう言うのがやっとだった。
秘書室長は私の荷物を見つけて、「これで全部?」と確認すると、私のバッグを片手に持って、もう片方は私と手を繋いだまま、フロアを出ていく。
これって捕獲されてしまった状態なんだろうか?
いつもの私だったら、こんなに強引にされたら全力で拒否するのに、なぜだか秘書室長のことは拒めなかった。
私の背後で開発部のフロアが大騒ぎになっているのがわかる。
まぁ、あんな状況を目の当たりにすれば、私が同じ立場だったら私も騒いでたかもしれない。
明日、どんな顔して会社に来ればいいんだろうか?
憂鬱な私とは対照的に、秘書室長は力強くどんどん歩いていく。
エレベーターに乗り込み、地下1階の駐車場に連れてこられた。
ここは役員専用の駐車場で、見渡せば高級車ばかりがズラリと並んでいる。
初めて見る光景にぼーっとなっていると、1台の黒い高級車の助手席に座るように促された。