秘書室長と鉄壁女子の攻防戦
鉄壁女子の過去


初めて乗る高級車に、私の緊張感は半端ない。

膝の上に置いたバッグをギュッと握り締めた。

「そんなガチガチにならなくても、ここでは襲ったりしない」

「はぁ…」

肉食系男子に言われても、なんの説得力もない。

っていうか、「ここでは」ってどういう意味だろうか?

しかも、よく考えたら、私は秘書室長のことはほとんど知らない。

秘書室長だって私のことは知らないはず。

そもそも、あんな場面に遭遇しなければ、こんなことにはなってなかったのに。

私とデートなんてしてていいんだろうか?

思わず運転中の秘書室長をジト目で睨んだ。

「なに?」

私の視線に気づいた秘書室長は、真っ直ぐ前を見て運転しながら訊いてきた。

「私とデートなんかしてていいんですか?受付の女性はいいんですか?」

「受付の女性?」

秘書室長はしばらく考え込んでいた。

「今日の修羅場の人ですよ」

「修羅場?…あぁ、あれね。告白されて断ったら泣いて出ていった」

なんとも初志貫徹な説明の仕方に一瞬笑ってしまいそうになった。


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