秘書室長と鉄壁女子の攻防戦


突然どんな顔してるかなんて訊かれても困る。

「今にも泣き出しそうな悲しい顔してるよ。一体なにが倉橋さんをそうさせてるのか、俺はすごく気になる。だから教えてほしい」

「そんなこと言われても…」

「それに俺は今楽しくて仕方がない。倉橋さんのいろんな表情を見ることが出来て。勇ましいかと思えば、切なそうな表情もするし、見てて飽きない。もっと倉橋さんのことを知りたいって思う」

「……」

そんなこと言われても、なんて返事をしていいのか本当に困ってしまう。

しかも、どうしたらいいのかと考えているうちに目的地に到着したらしく、車はゆっくり停止した。

どこかの駐車場だろうか?

車を降りて周りを見渡せば、これまた高級車がズラリと並んでいる。

秘書室長はさも当たり前のように私の手を握り、スタスタと歩き始める。

エレベーターに乗り込むと、最上階のボタンを押した。

「ここの和食、旨いよ」

背の高い秘書室長に見下ろされて、思わず視線を逸らした。


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