秘書室長と鉄壁女子の攻防戦
どちら様ですか?
「嫌がってるんだから、離してあげたほうがいいんじゃないですか?」
仕事帰り、エントランスを出たところで、ナンパ男に捕まった女の子が視界に入った。
会社の真ん前でやめてほしい。
迷惑極まりない。
女の子は相当抵抗しているけど、ナンパ男は一向に引き下がらない。
それどころか、女の子の腕を掴んで連れて行こうとしている。
あれは行き過ぎだ。
不愉快極まりない。
私はふたりの間に割って入り、ナンパ男を睨み付けた。
「じゃあ、代わりに付き合ってよ」
「はぁ!?」
ナンパ男は女の子の腕を離すと、今度は私の腕を掴んだ。
女の子は隣でアタフタしている。
そもそも代わりってなんだ?
冗談じゃない。
私はそんな安っぽい女じゃない。
怒り心頭で、頭に血が昇った私はナンパ男に平手打ちしようとした。
ちょうどその時、背後に気配を感じた。
「おい、ウチの会社の真ん前でなにやってる。さっさと手を離せ」
低くて凄みを帯びた声が聞こえて振り返った。