秘書室長と鉄壁女子の攻防戦
「ありがとうございました。助かりました。それじゃ、失礼します」
今度こそ帰ろうとしたところで、またしても引き止められる。
「あなたも気をつけて」
笑いながら言われると、本当に嫌な感じ。
「失礼します」
私は視線を合わせることなく、足早にその場から離れた。
助けてもらっておいてなんだけど、なんか感じ悪くない?
長身で、着ているスーツは上質そうだった気がする。
おそらく私より年上で、仕事はきっちりこなすタイプだと思う。
ウチの会社の警備員を引き連れて現れたところを見ると、一般社員じゃないのかもしれない。
でも、正直言って顔をあんまり見てないから、どんな顔立ちだったかは、はっきりしない。
まぁ、会うことは二度とないと思うし、すれ違ってもわからないだろう。
大好きなお酒でも呑んで、嫌なことはさっさと忘れるに限る。
コンビニに寄って、明日の仕事に響かない程度にテキトーにお酒や食料を買い込んで、家路に着いた。