「彼」が死んだ日、「世界」が壊れた日
「悲しんでおられるようですね」
ぴしりとしたスーツを着こなした男は顔に薄らと笑顔を浮かべそう言ってきた。
笑顔でそんなこと言われてもなんかなぁ。
突然現れた男に愛想笑いも浮かべず立ち尽くしていると、男がああっと声をあげた。
「怪しい者じゃありませんよ? ただ、哀切きわまりないオーラを感じ来てみたら、生気の感じられない人間がいたものですから、つい」
哀切きまわりないオーラとか、生気の感じられない人間とか、わたしをばかにしているの?
そう思ったけれど、なんだか返事をするのもばかばかしいと思い、わたしは口を閉ざした。
初めて会った人間。
落ち込んでいるわたしをからかっているに違いない。
こんなばかな悪戯に付き合っているのも時間の無駄だ。
そう思い前を向こうとすると、
「わたしはあなたをお救いすることができるかもしれません」
男が、ふっと笑った。
その真意の読み取れない瞳が細くなる。