「彼」が死んだ日、「世界」が壊れた日
...4
その男は自分のことを神の使いのようなものだと名乗った。
そんなわけがない。
そう思ったけれど、あえて突っ込まない。
「過去に、戻りたい?」
「うん。昨日に戻りたいの。できる?」
「もちろんですとも」
わたしの隣に腰をかけた男に、ただ過去に戻りたいとだけ伝えた。
男は迷うことなく即答する。
わたしはそんな男の横顔を、観察するようにじいっと見つめていた。
わたしはこの男を信用しきっているわけではなかった。
だって現実的には絶対にありえないことだもの。
過去に戻れる、なんて。
ただわたしはこの男の話に付き合っている、そんな感覚で話していた。
男の言葉に一割の肯定と、九割の否定。
少し期待しながら、だけど有り得ないと現実を見ながら。