「彼」が死んだ日、「世界」が壊れた日
まさに、その通り。
ひどく儚くひどく虚しい。
それを一生懸命に生きようとするのが人間だ。


「さあ、余談はこれくらいにしておきましょう」


段々と下がっていた男の手に気合が入る。
しおれていた指は生き返ったようにぴんと張り詰める。

わたしはごくりと口の中の唾液を嚥下した。


「本当にいいですね」
「さっきからしつこいわね」
「これであなたの運命が変わってしまうんです。それくらいしつこくないと」
「あら、わたしがあなたの手をとろうととるまいと、あなたが出会ったことでわたしの人生は大きく変わってしまったと思うけど」
「……そうですね」


悪戯っぽく言ってやると、男は苦虫を噛み潰したような顔をした。
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