「彼」が死んだ日、「世界」が壊れた日
「どうしたの、美里。泣いたの? それともただ単に寝不足?」
「あー……たぶん、寝不足。昨日寝たの遅いし。ほ、ほらっ、テストもうすぐだし!」
「そう、お勉強頑張っているのね。だけど体調を崩すのはよくないから、十二時までには寝なさいね」
お母さんはそう言うとテーブルから離れキッチンの方へ向かった。
勉強したなんて嘘だ。
この目の腫れは、明らかに泣き腫らしたものだ。
それは、今日――いや、厳密にいうと「明日」、御崎を失ったわたしが泣いてなってしまったものだ。
わたしは過去に戻ってきたのだ。
御崎が死んだのは本当で、怪しげな男の言っていたことも本当で。
御崎が死んだ。
その事実が明瞭になり、再び曇り始める心。
だけどまだ助けられるという希望が、心の中に舞い戻る。