「彼」が死んだ日、「世界」が壊れた日
「わたし、行ってくる!」
「何よ、いきなり。どうしたっていうの」


そのまま玄関に突進して、靴を履くためにしゃがむ。
靴を履き終え、立ち上がろうとすると、お母さんがエプロンで手を拭きながらわたしの傍に歩いてきた。
思わず振り向くと、心配そうな、呆れたような、よく分からない顔をしているお母さんと目があった。


御崎を助けなくてはいけない。
そしてそれには時間が限られている。
だから早くしなくては。

早く、早く早く。

急かす気持ちが、わたしを動かした。
そしてドアノブに触れた瞬間、後ろからお母さんの声がした。
いつもどおりの、それは妙に優しくて。


「いってらっしゃい、美里」


思考がストップした。
そのせいで不要な感情がたくさんはいってくる。


〔二時になったらあなたは消滅する〕


あの男の言葉が頭の中でくるくると踊っていた。
そう、わたしの人生はもう終わってしまったといっても過言ではない。
わたしは御崎のために自分の人生を捨てたのだ。

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