「彼」が死んだ日、「世界」が壊れた日
だって、わたしは御崎のためにそれしかできないから。

だけど。
だけどだけど。


「おかーさん」
「ん? なあに」
「いやー、あのねー」


やっぱり失う瀬戸際になると恋しくなるものだ。
わたしは猫なで声で、彼女を呼ぶ。


「そこまで嫌な人生じゃ、なかった、と思うよ」


何の変哲もない毎日。
嫌で嫌で何度も放り出そうとしていたけれど。
自殺するほど嫌ってわけじゃなかったし、自分の消極さに泣けていただけであって。

わたしは真ん中だった。
平凡だった。普通だった。
ただわたしはそれ以上を求めていただけで。

何の不自由もなく、気付かなかったけれどたくさんの愛に囲まれていたわけであり。
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