「彼」が死んだ日、「世界」が壊れた日

それはわたしの家とあまり変わらない、二階建ての普通の家だった。
高鳴る胸をおさえながら、インターホンを押す。

すると三十秒もしない間に、家の中からどたばたと階段を駆け下りるような音がし、それに驚いていると玄関のドアが開いた。
そこに現れたのは、わたしのお母さんとあまり年は変わらないだろう女の人だった。
きっと、御崎のお母さんだろう。


「あの、御崎雄一君はいらっしゃいますか」


汗ばんだ手を握り締めて、わたしは勇気を出しそう尋ねた。
すると御崎のお母さんは少しだけ頬を赤らめて、逆に質問してくる。


「あらあら、もしかして雄一の彼女?」
「い、いえ、違います。クラスメートなんですけど、えーっと、近くに寄ったから少しお話したいなぁとか思いまして」
「あら、そうなの」


ちょっと残念そうな顔。
彼女じゃなくて申し訳ありませんね、と心の中で苦笑いしながら、わたしはもう一度尋ねてみる。
雄一君はいらっしゃいますか、と。
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