「彼」が死んだ日、「世界」が壊れた日
「ごめんなさいね。今さっき、家を出たのよ。映画に見に行くとか言って」
御崎のお母さんは頬に手を寄せて、申し訳なさそうに言った。
家を出てしまった。
どうしよう。
もう手遅れかもしれない。
不安が心を渦巻き、わたしは弱々しい返事をした。
視線はもう真下の砂利に注がれている。
「そう、ですか」
「だけど歩きだから、追いつくかもしれないわよ。あの子足遅いし」
励ますような口調に合わせて、わたしも顔を上げそうですよねと相槌を打った。