「彼」が死んだ日、「世界」が壊れた日
「大丈夫か? すごい汗だぞ」
「う……ん?」
「お前の家、近くだったよな。早く家に帰って休めよ」
御崎はポケットからハンカチを出すと、わたしの手に握らせた。
そして「じゃあ、また明日な」と気障に捨て台詞をはくと、鼻歌を歌いながら去っていった。
三秒くらいして、やっと目が覚めた。
今まで自分のしたことなどを一気に思い出し、わたしはいきおいよく立ち上がった。
いきおいよすぎたのだろうか、少しだけくらりとした。
「み、御崎!」
さっき走りすぎたせいだろうか。
わたしの声は掠れていて、自分の声が耳に入ったときにぎょっとした。
そのうえ息を吸うたびに、喉の奥に冷たい空気が入ってきたようにひんやりとした。
「待って、お願い、行かないで!」
「ちょ、おい、そんな大声出すと喉ぶっ壊れるぞ。行くから、声出すな」