「彼」が死んだ日、「世界」が壊れた日

「しっかたねえなぁ」


もう駄目かもしれないと諦めかけた矢先、御崎の優しそうな声が降ってきた。
驚いて顔を上げると、呆れたような笑顔を浮かべた御崎がいた。


「そんな必死な顔でお願いされちゃ、俺も断れないぜ?」
「う、うん」
「特に見たかった映画じゃないし、後で友達に電話かけとくわ。でも、約束だからな。明日、俺のいうこと聞くんだぞ」


わたし、御崎を救えた?
あの笑顔を、守れた?
御崎の命を、繋ぎとめることができた?


「別のルートで映画館行くとかなしだからね。本当に家に帰るんだよ」
「分かってる、分かってるって」
「本当? 約束だよ?」


何度も何度も確認するしつこいわたしに呆れたのだろうか。
御崎は分かってるよと適当に言って、ゆっくりと立ち上がった。


「俺はお前のいうこときいて、大人しく家に帰る。だからお前も、ちょっと休んだらすぐに家に帰るんだぞ」


そんな優しい言葉にうんと頷く。
普段通りの御崎に少しどぎまぎしながら控え目に手を振ってみると、御崎もこちらを振り向いて手を振ってくれた。
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