「彼」が死んだ日、「世界」が壊れた日
...6
彼は、はあはあと苦しそうな呼吸を繰り返す。
たまに咳をしながら、必死に酸素を吸い込んでいた。
「み、……さとっ」
名前を呼ばれる。
まるで吐き出すかのように。
恐る恐る振り向くと、わたしから二十五メートルほど離れたところに御崎がいた。
苦しそうに顔を歪ませながら、肩で息をしている。
わたしと目があうと、御崎は無理やり感が否めない笑顔を見せてくれた。
「御崎……?」
耳に届いた自分の声は、信じられないほどにかすれていた。
疑問はたくさんあった。
どうしてここにいるの。なんでわたしを追っているの、などなど。
だけど、それよりも、どす黒い感情が心にとぐろを巻いていた。