「彼」が死んだ日、「世界」が壊れた日
「あー、まさか約束のこと怒ってる? それなら事情があるんだよ。聞けってば」
「……事情って」
「まあそれは置いといて。時間がないんだよ。だからお願い。ちょっと聞いて」
御崎が覚束ない足取りで近付いてくる。
歩いている最中も、しっかりとわたしを見つめて。
時間がないというのはわたしも同じだ。
ちらりと時計を見てみると、もう十一時半。
わたしにはあと三十分しか残されていないのだ。
「とりあえず、ありがとう。美里」
そんなことを考えているうちに、御崎はわたしの近くまで来ていた。
その至近距離に驚いて、それからお礼を言われたことに驚いた。
わたし、なにか御崎にお礼を言われるようなことしたっけ? と。