「彼」が死んだ日、「世界」が壊れた日
「まじでごめん。俺のせいでごたごたしちまって。あっちの世界に戻ったら、みんなによろしく頼む」
「ちょっと御崎、遺言みたいなこと言わないでよ!」
「いや、遺言だし」
わたし、ずっと御崎のことが好きだったんだよ、とか。
わたしより御崎のほうが必要とされてるんだよ、とか。
御崎のおかげでわたしは生きられたんだから、今度はわたしが御崎に何かしてあげたいの、とか。
「じょ、冗談じゃないわ! ねえ、今からでも考え直さない? わたしより御崎が生きていた方が、みんな喜ぶし」
「そんなことない。美里が死んだら傷付く人がたくさんいる」
「御崎だって、御崎だってそうだよ! ううん、御崎のほうがいろんな人から慕われてたじゃん! わたしの方が必要性ないもん!」
間接的に考え直せということを伝えるが、御崎はその意見に見向きもしない。
わたしもさっきに比べれば落ち着いてきたけれど、重石がされているかのように心が重かった。
たぶん、それは、わたし自身がそれを諦めているからなんだろう。
自分が諦めてちゃ実現することなんて無理なのに、と再び俯き加減になる。
頭を垂れるとはこのことを言うのだろうか。
なんて考えていると、いきなり御崎の手がわたしの顔のほうへと伸びてきた。