「彼」が死んだ日、「世界」が壊れた日
「美里? なにが?」
「指が、御崎の、指が」
「指?」
わたしの声に応え、ゆっくりと目線を自分の指までおろしていく御崎。
わたしはその様子を、微動だにせず見つめていた。
静寂が辺りを包む。
まるで時間がとまったようだった。
太陽だけがわたしと御崎を照らし続けていた。
「……御崎?」
動かない御崎に声をかける。
その静寂に見合った小さな声で。
すると御崎はまたしてもゆっくりと顔を上げて、
「なるほど、こういう風に死ぬんだ。だけどなんかラッキーかも。痛くも痒くもないし」
嬉しそうに、にこりと笑った。
衝撃的な事態に声も出ないわたしの脳に、おそろしく陽気な声がひびく。