「彼」が死んだ日、「世界」が壊れた日

「美里? なにが?」
「指が、御崎の、指が」
「指?」


わたしの声に応え、ゆっくりと目線を自分の指までおろしていく御崎。
わたしはその様子を、微動だにせず見つめていた。

静寂が辺りを包む。
まるで時間がとまったようだった。
太陽だけがわたしと御崎を照らし続けていた。


「……御崎?」


動かない御崎に声をかける。
その静寂に見合った小さな声で。
すると御崎はまたしてもゆっくりと顔を上げて、


「なるほど、こういう風に死ぬんだ。だけどなんかラッキーかも。痛くも痒くもないし」


嬉しそうに、にこりと笑った。
衝撃的な事態に声も出ないわたしの脳に、おそろしく陽気な声がひびく。
< 74 / 100 >

この作品をシェア

pagetop